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鳥取 大山町の鮑と栄螺



日本全国どころかフランスまで牡蠣を食べに行った私が岩牡蠣は一番美味しいと確信している石川県に、同じような海域の海産物を送って来るという挑戦的なことをしてくださる東京の友人がいて、ありがたく頂戴した。捌いてみて、調理してみて、食べてみて、びっくりした。
アワビを食べるのは鉄板焼きか中華くらいしか覚えがなく、雄なら刺身、雌ならステーキかなあという程度しか知らず、当然調理などしたことがない。サザエは慣れてる。鳥取から送られてくると知った瞬間から、まずは何人かの調理人にアワビの下ごしらえや一番いい調理法などを聞いて回った。それでいくつか逡巡もしたのだが、主にステーキ、少し刺身、という割り振りに決めた。


アワビは海水に入ったまま送られてきた。


レモンとの比較。大きくて立派。

アワビの捌き方は簡単。ナイフをぐるりと回し入れて身を取り、薄皮のようなものは手で取り除き、その下にある肝を破らずに出せばオッケー。貝殻に身だか貝柱だかが残っていても、貝殻をトースターやグリルで焼けばいい。指で簡単に取れる。もちろん食べられる。


ここまでやれば、できたも同然。ヒモも楽しみ。


隠し包丁など不要だった。冷凍の安い烏賊ではないのだ。

まずはアワビのステーキ。セオリー通りアワビを塩で揉んで、洗って、隠し包丁を入れる。実はそんなセオリーなど不要だったと知ったのは、調理している途中であった。できることならもう一度アワビを調理するチャンスがほしい。味つけは、醤油とバター、そしてレモン。びっくりするほど柔らかくて、そのままかぶりついてもいいくらいで、でもそれなりにステーキらしくしようということで、コンベクションオーブンで焼いて、南部鉄の鉄皿に移して醤油をスプレーしてさらに焼いた。ガルニは万能葱。生でも柔らかく、焼いても柔らかい。こんなアワビは初めてだった。生でも焼いてもこりこりした歯ごたえがあって、薄く切らないと噛み切れない。それが今までの私にとってのアワビだった。こんなに違うのかと過去の色々なシーンを反芻しながら、これを知らずに死んでいたら何ともったいないことだったのかとも思った。


アワビのステーキ。器は南部鉄のステーキ皿。
受け皿は白木で、安いハンバーグチェーン店みたいで嫌なので、購入してから黒漆を塗ったもの。


ついでにミネストローネのつもりがポタージュのようになったトマトスープ。
器は萩焼の平茶碗。

サザエの捌き方にはコツがふたつある。適切な位置にナイフを刺し入れたら躊躇せず瞬時に貝を時計回りに回してナイフを貝の中で一周させる。そして、貝殻と身の間にエアポケットができたら指を入れて、貝殻にひっついてるところを指でぐりぐりやって離す。それで、肝まで一繋がりになって出てくる。にゅるんと。私は些かこの見た目が苦手だ。しかも立派なサザエが8つもあって、気がつけば私の小さな台所は伊藤潤二「うずまき」の世界である。やばい。


苦手だなあと思っているところにピントが合う。

サザエは、ぶつ切りにして、ガーリーックバター醤油炒め。少し前からWMFのステンレスの三層のフライパンを使っており、これもいずれきちんと紹介したいと思いつつ、ステンレスの鍋やパンは写り込みがものすごいのでメーカーのカタログのような写真を撮れず、つまり写真がいまいちなのでブログ記事にできていない。そんなフライパンにオリーブオイルを垂らして加熱、オリーブオイルが熱くなったら加熱をやめて、少し冷ます。ニンニクを入れ、再び加熱。とろ火。サザエを入れたらすぐさま塩胡椒、そしてイタリアではスパイスペッシェと呼ばれている、魚料理にぴったりのハーブとスパイスがひとつになったもの(これは本当に便利で、魚だけでなく肉にもいけるし、パスタなどはこれだけで美味しく食べられる)をたっぷりとかけ、水気が出てきたらバターと醤油。あとは、好みの煮詰まり具合のところで器に盛ってパセリをのせれば完成。あほみたいに簡単で、あほみたいに美味しい。味つけがオリーブオイルとニンニクとバターと醤油という、和食というよりはあっちの料理のような感じなので、茶はゴールデンマンゴー入りの緑茶にした。パンとワインにしとけば良いのだろうけど、定食を食べたかった。


一汁一菜といえば一汁一菜ではある。


パンかパスタがあったらどんだけでも食べられる味。

最後に、朝食でアワビの刺身とサザエの刺身。これまた柔らかい。ヒモまで柔らかい。むしろサザエのほうが段違いの歯ごたえだ。ここまで薄く小さくしなくても良い。刺身は、アワビの肝を溶いた醤油と、レモン、山葵。幸い国産のレモンと山葵があったので、割とちゃんとした刺身となった。生臭さなど皆無。むしろ爽やかで鮮烈な風味。鼻腔が快感。獲りたての岩牡蠣をそのまま何もつけずに食べたときの鮮烈さと同じ種類のものだ。これはほんとうに極上のアワビとサザエ。料亭、割烹、鮨、それらの店で口にしたアワビには、ここまで新鮮で柔らかいものがない。ハンバーガーのように丸ごと焼いてかぶりついても美味しいんじゃないのってくらい柔らかい。これは良いものを頂戴した。


捌いてから(塩水に浸けて)少し時間が経ってもこの煌めき。


一汁一菜。

鰤や蟹は東北でも北陸でも山陰でも、同じような漁場で獲ってたりする。どの漁港に水揚げされたかが「産地」となる。錦織圭の一言によって大ブレイクしたノドグロなども、そうだ。でも鮑や栄螺、そして牡蠣などは、そんな沖まで行かない。なのでその土地の環境や水の違いが如実に顕れる。最も人口の少ない都道府県として爆走している鳥取だが、だからこそこれほどまでに美味なるものがあるともいえる。これは、太平洋ベルト地帯から外れた地域すべてに言えることではあるが、それでも日本海側には工業地域がいくつかあり、そんなところのは、やっぱり残念だったりする。

以上是二千三百八十字也


漁師中村:公式サイト
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