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溜塗(ためぬり)
古くは、貴族だけが使うことを許された色でした。
紫に近い(転ぶ)色だからかもしれませんし、
手間がかかり取扱いも気を遣う塗りだからかもしれません。
下塗りをして、その上に透漆(すきうるし:精製した漆そのままのもの)を塗ります。
塗り上がったばかりのころは、黒と見わけがつきません。
時間が経つと、漆が紫外線によって落ちて/引いていき、
木目が透けて見えてくるようになります。
透けて見える(色が抜けてくる)度合いは、保管の状態によって異なります。
できあがってから1年ほど箱にしまっておくと漆は強固になり、
あまり透けないものになります。
反対に、ずっと放置しておくと、すぐに透けてきます。
溜塗にはいくつか種類があり「黄溜」「朱溜」と呼ばれています。
まったく木目の見えない艶消しもあります。
飛騨の春慶塗も、溜塗のひとつです。
似た塗りに「木地呂(きじろ)」があります。
こちらもいずれ取り上げたいと思っています。
画像は、厚さ2mmの青海盆(せいかいぼん)です。
縁が割れてしまったので、自分で使っています。
本来は干菓子盆なのですが、お酒の肴を盛っています。
これは、オープンタイプの棚に、ひっくり返して置いています。
15時から日没まで、強い陽射しがあたる場所です。
約1年、そうして使ってきました。
これが、ひっくり返した裏面です。
かなり木目が見えています。
次に、表面を同じようにISO200で撮ってみます。
光のあたる角度が違うといえば違うのですが、これだけ違いが出ます。
溜は、熱に弱い塗りです。
熱湯を注ぐと、白っぽく濁ります。
まともな漆器屋であれば、
溜塗のお椀の内側は黒塗にしてあるはずです。
たまにお椀の内側も溜塗になっているものを見かけますが、
あれは自ら「漆じゃないよ」「混ぜ物してるよ」と言っているようなものです。
(MR3など熱や紫外線に強い漆も開発されましたが、あまり使われていません。
MR3など分子構造を変えた漆が優れているのか否かは、
答えは20年経たないと出ないと私は考えています)
カトラリーも多く出回っています。
それらは何が塗られているのか私には解りませんが、
漆100%でないことだけは確かです。
茶道具などで、古くに作られたものが、
えもいわれぬ風合いを醸していることがあります。
見事なまでに透き通り、傷ひとつない棗。
時の流れによって変化していくことは、
自然素材だけが持ちうる特質です。
傷がつきやすいように思える溜塗ですが、
私が作る器は、布で拭いても傷がつきません。
ちゃんとした素材であれば、そんなことはないのです。
紫外線は、日光だけでなく蛍光灯などの灯りにも含まれているので、
黒に近い感じで使い続けたい方は箱や棚に入れてください。
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